研究 / Research

アーキテクチャ科学研究系

合田 憲人
AIDA Kento
アーキテクチャ科学研究系 教授
学位:博士(工学)
専門分野:計算機アーキテクチャ
研究内容:http://researchmap.jp/aida/

サイエンスライターによる研究紹介

高性能計算をすぐに誰でも使えるサービスを目指して

コンピューターの進歩はめざましく、私たちが使っているパーソナル・コンピューターでも、20 年前の計算機センターのコンピューターの性能を越えるまでになりました。それに伴って、計算機科学も進歩しています。この分野をより発展させ、成果として得られる強力な高性能計算技術を、計算機科学の研究者だけでなく、誰でもすぐに使えるものにすることが私の夢です。

計算機科学の進歩

現実にある複雑な問題を解くには、コンピューターの性能を上げるだけではなく、計算時間を減らすための解き方(アルゴリズム)の工夫が不可欠です。ただし、どんな問題にも使える万能のアルゴリズムはありませんから、いろいろな応用問題についてその本質を見極め、良いアルゴリズムを作ることが大事です。
例えば、私の研究室で取り組んでいる研究の1つに、野球チームの最強の打順を作るという問題があります。これを解くには、対象とするチームの過去の全戦績を調べ、期待できる得点数がいちばん高い打順を選び出す必要があります。そのための数学的モデルは1970 年代には見つかっていましたが、現実には応用できませんでした。計算量が膨大で、当時の計算機と最適化手法では処理できなかったからです。したがって、「1 チームには10 人しかいない」、「3 人は成績がまったく一緒」という非現実的な制約条件を付けたアルゴリズムしか考案されていませんでした。
ところが、この四半世紀で状況は一変しました。計算機の高性能化、特にグリッドコンピューティング環境の出現と、アルゴリズムの最適化手法の進歩によって、現実に近い問題でも解けるようになったのです。今では「この選手は足が速いので、ゴロでも守備の選手の動きしだいで、ヒットになる」といったことまで考慮して計算できるようになりました。

誰もが使えるグリッド環境を整備する

グリッドコンピューティングとは、ネットワークに接続された複数のコンピューターを連携させて利用するための技術です。グリッドコンピューティングを使うと、複数のコンピューターを同時に利用してスパコン並み、またはそれ以上の性能を発揮させることや、地理的に分散した計算機やデータを連携させた複雑な処理を簡単に実現できるようになります。
ネットワークで接続されたコンピューターを連携して利用することは、グリッドという言葉が登場する前から始まっていますが、これまではユーザーがコンピューターやネットワークに関する高度な知識を身につけ、また煩雑な操作をしなければなりませんでした。グリッドの研究目標は、例えばホームページを見るような簡単な操作で、これをできるようにしようというものです。
しかし、現在のグリッドコンピューティング環境は、専門外のユーザーにとってはまだ敷居の高いものであるのが現実です。この問題を解決するためには多くの課題がありますが、ユーザーのプログラムに適したコンピューターを自動的に探す技術や、ユーザーのプログラムをグリッド向けに最適化する技術を確立し、グリッドの目標を達成したいと考えています。
また、グリッドを普及させるには、サービスを安定して提供する必要がありますが、今のグリッドは、企業のネットワーク管理者や計算機センターの担当者がすぐに運用できるほど簡単なものではありません。ですから、人材を育てるところから始めなければなりません。この状況はインターネットの黎明期に似ています。この壁を越えれば、誰もが高性能なグリッドを簡単に利用できるようになるはずです。
海外でも米国はTeraGrid、EU はEGEE という科学技術研究用の大規模なグリッド環境の構築を進めており、実際にさまざまな分野の研究者や技術者に利用されています。NII は日本の大学や研究機関と協力して新しい情報基盤であるサイバーサイエンスインフラストラクチャー(CSI)の構築を進めています。グリッドもCSI を構成する基盤の1つですが、これを計算機科学以外の研究者も利用できる実用的サービスとして提供することが、私のミッションの1つです。日本の科学技術面での国際競争力を維持するため、お役に立てればと思っています。

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取材・構成 齋藤 淳

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