イベント / EVENT
平成19年度 第8回 Q&A
第8回 2008年2月12日(火)
社会に生きる数学
--"数学者"ガウスに学ぶ--
速水 謙(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 教授)
講演当日に頂いたご質問への回答(全18件)
※回答が可能な質問のみ掲載しています。
ガウス分布に使用されているeはどのように発見されたのでしょうか。
オイラー(1707-83)が自然対数の底として発見しました。
最小二乗法について。二乗、三乗・・・、n乗として解を求めた時に解は収束するのでしょうか? n が偶数か奇数かで挙動が異なる?
偶数の場合は最大誤差が最小になるような解に収束すると思います。
数論が暗号に使われているとの事ですが、具体的にはどのように?
インターネットの通信で使われている公開鍵暗号では、「積の計算は簡単だが因数分解は難しくて時間がかかる」という事実に基づいて、フェルマーの小定理のオイラーによる一般化などの数論を用いています。(岩波、数学入門辞典 参照)
ガウス ザイデル法の初期値 x0 を決定する良い方法はありますか?(数学的に)それにより収束の速さは違ってきますか?
何らかの解法を用いて近似解を求めておく方法が考えられます。マルチグリッド法はある意味でそれを繰り返すことにより収束を加速します。
最小二乗法以外の有力な問題解決法はどんなものがありますか?
最近は「最小一乗法」に相当する考え方が見直されているようです。
家庭で使える最小二乗法とは、どんなものがありますか?
最小二乗法標準プログラムSALS(文献[4]参照)というものがあります。Matlab, Scilab(無償ソフト)などの数値計算ソフトウェアにも最小二乗法に関係するプログラムがあります。その他にも統計計算のパッケージがあると思います。
美しくない数学とは?
不必要に複雑で見通しの悪い数学、細かい仮定が多すぎる数学でしょうか? しかしひょっとしたらその中にも磨けば美しくなる原石もあるかもしれませんね。
①ガウスは幼少の頃から数学の才能を示したそうですが、そのような数学の才能は一般的には生来のものでしょうか? あるいは後天的に学べるものでしょうか?それには効果的な年齢があるでしょうか?
②「"数"って何?」と子供に聞かれたら一言で何と言えばいいでしょう。「数の定義」を教えてください。
①生来のものと後天的なものと両面あるのではないでしょうか? ただ程度の差はあれ、多くの人にとって数学を楽しむことは可能なのではないでしょうか? 効果的な年齢は10代から20代でしょうか? でもそれ以降でも数学が好きになることはできるでしょう。
②原始人のように2匹の獲物を二つの獲物の絵に対応させる、というように1対1に対応させるところからまず(自然)数が発生したのではないでしょうか?
最小"二乗"法でなく、最小"絶対値"法だとどうなるのでしょうか? *最小"絶対値"の方がより直感的だと思うのですが・・・。ラプラスの「最小一乗法」というのは、この"絶対値"ですか
計算が複雑になります。ラプラスの場合は残差の和が0になるという条件のもとで残差の絶対値の和を最小にしようとしました。そうすると、方程式がm個、未知数がn(<m)個の場合、n個の方程式だけが満たされることを示しました。
①「数学は科学の女王・・・」との事ですが、「数学は科学の王」でないのはどうしてでしょう? もし「王」があるとしたらそれは何?
②「社会に生きる数学」 → 「数学は社会に役立っている」の現状は理解できますが、例えば、宇宙や脳などの理解には新しい数学が必要な気がしますが、先生のお考えはいかがですか? 新数学が生まれる可能性がありますか?
①恐らく数学の美しさから「女王」と表現したのでしょう。王は物理学でしょうか?
②確かに宇宙論には相対論や量子力学が必要ですし、ビッグバンの理論も数学的には特異点としてモデル化されたように数学は必要ですね。脳も神経回路網(ニューラル・ネットワーク)の数学的なモデルにはじまって、数学的なモデルが実験とともに威力を発揮していると思います。新数学も生まれていると思います。
「数学が美しい」ということは、どういうことなのか理解できないので、解説していただきたい。
理論が簡潔なのに内容が深く、見通しがよく、他の理論とも関連したりしていることでしょうか?
数学のよりどころは公理だと思います。そして自然科学は数学の導く結果を"眞"としております。この限界の問題を数学者はどのように理解(割り切る)されているのでしょうか。
そうですね。どういう公理から出発するかが本質的だと思います。自然科学では、公理(仮定)が自然現象を記述するのにふさわしいものであれば、その公理に基づく数学の帰結は真(実験事実と合う)でしょう。狭い意味では数学者は扱う数学が自然現象を記述するのに適しているかどうかに束縛されずに研究するのではないでしょうか? 一方で、自然現象をうまく記述できる数学が豊かな内容をもっていてそれに関心を持つ数学者(数理学者)はかなりいるのではないでしょうか?
囲碁では最終的な善手は存在しないとプロは主張しています。(可能な着手の組み合わせが兆を超えるため) もし計算時間に制限がないか、極端に速度の高い計算機があらわれた場合でも、この主張は妥当でしょうか?
囲碁は詳しくないのですが、確かに計算時間または計算速度が無制限にあれば善手は求まるでしょうね。現在の計算機ではまだプロの囲碁士には勝てないそうですが。
①ガウスとラマヌジャンとの似ている所と異なる所を言うとすると、どうなるでしょうか?
②子供をガウスやラマヌジャンのような数学者にするとすれば、どういうふうに指導するのがよいでしょうか? or 速水先生ご自身の数論研究法 との遊び方? → 今ならパソコンも使いながら、要はいろいろ計算を楽しむことでしょうか?
*ガウス、ラマヌジャンのどちらの仕事もそれほどよく理解しているわけではありません。(数学セミナー程度の数学愛好者の一人です。)
①両方とも数学の大天才で驚異的なひらめきをたくさんもっていたという意味では似ていたのでしょう。異なる点は、ラマヌジャンの興味は数論の分野に限定されていたようですが、ガウスは数論だけでなく、他の数学、物理学にも興味を持っていた点でしょう。また、ガウスは幼少から比較的恵まれた数学の教育を受けたようですが、ラマヌジャンの場合はハーディーに見出されるまではかなり独学に頼ったようです。
②子供が数学が好きならその子の興味に合わせて面白い数学の問題や本や講演などに接する機会を与えればいいでしょう。好きでない子に無理強いするのは逆効果でしょう。私自身は数論の研究はしていませんが、最小二乗法などの数値計算の研究を行っています。式をいじくりまわしたり、数値計算の理論を考えるのは好きです。時間ができたらもっとパソコンもいじりたいと思います。
現在の数式等の表記法は、どのような経緯で定められたものですか。
詳しくないのですが、歴史の中では意外と最近のようですね。江戸時代の日本やアラビアの数学では今のような数式は使われていなかったわけですし。近代になって数式が使われるようになって代数学等、飛躍的に発展したそうですね。数式の威力はすごい!行列の表記にしても20世紀とかかなり最近のことのようですね。
最小二乗法に関するガウスとルジャンドルの発見の違いは何か?(具体的な点について)
論文として方法を最初に発表したのはルジャンドルで、ガウスが使っていた方法と本質的には同じものだったでしょう。ただ、ガウスはその理論的な正当性をはじめて与えました。はじめはガウス分布に従う観測値に対して、後により一般的な分布に対しても(ガウス・マルコフの定理)。
高校レベルまでの数学では「計算能力」が重視されるが、それより上のレベルで「計算」は、どの程度重要か。計算は不得意でも概念構成力などの別の能力が必要、あるいは役に立つケースもあるのではないか。
両方必要だと思います。「純粋」数学でも理論や概念を立てたりチェックするのに計算が必要な場合もあるそうです。一方で、応用数理的な研究でも計算能力だけでは不十分で、概念構成力や理論の構築も大切だと思います。
現在、計算手法が話題になるのはコンピュータがノイマン型(逐次処理)だからでしょうか? コンピュータがファインマン方式だと、あまり気にならなくなるのでしょうか? NP完全問題とかとは別に。
並列処理は並列処理向きの計算手法の開発が必要です。また、量子計算では従来とは本質的に異なる計算理論の枠組みが必要です。
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