【概要】
SPARC Japanでは2013年に「人社系オープンアクセスの現在」を,2015年に「学術情報のあり方‐人社系の研究評価を中心に‐」をテーマとするセミナーを開催し,人文系・社会科学系分野(以下,人社系)と他分野の状況の違いや課題を確認してきた。数年が経った今,人社系のオープン化は進展しているものの,解決すべき課題も多い状況だと言える。
国内でも人社系のジャーナル,データ等のオープン化につながる動きが進んできた。日本学術振興会では2018年から「人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業」が実施され,特に社会科学における取り組みが期待されている。情報・システム研究機構は「データサイエンス共同利用基盤施設」を設置,人社系においては「社会データ構造化センター」および「人文学オープンデータ共同利用センター」がデータ駆動型研究を促進するための支援を開始している。これまでも言語学や社会調査などで人社系データの整備が精力的に進められてきたが,一層の基盤整備が期待される状況である。
一方で,2013年のSPARC Japanセミナーで指摘された人社系の「学問固有,研究者固有のニーズに応じた」オープン化は未だ明確ではない。人社系ではジャーナルと同等,またはそれ以上にモノグラフが重要である。研究成果は機関リポジトリへの搭載も進んでいるが,通常の商業出版で公開されることも多く,必ずしもオープンな動きと相性は良くない。また研究成果の多くが,大手総合学術雑誌ではカバーされず,紀要や個別の学会誌で発信される。J-Stageや機関リポジトリでの公開が増えているものの,学会等の役割やオープン化の担い方を問い直される状況にもある。
人社系におけるオープンサイエンスの定着に向けては,あらためて分野の置かれている状況を具体的に確認し,課題を共有する必要がある。本セミナーでは,データインフラの構築,モノグラフのオープン化,紀要のデジタル化という具体的な実践事例を取り上げ,解説を交えながら最新の情報を共有しつつ議論を行う。
|