Mar. 2021No.91

NII Research Data Cloud 本格始動へオープンサイエンスを支える研究データ基盤

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国内初の研究データ管理のためのトレーニングコース

体制づくりから支援人材の育成まで

2021年6月、NIIが全国の大学等と構築する学術認証フェデレーションの学習管理システム「GakuNin LMS(Learning Management System)」において、研究データ管理を始める機関向けのトレーニングコースの提供が正式に始まる。本コースをオープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)とともに開発してきた2人に、日本における研究データ管理の現状と、トレーニングコースを実践へつなげていくポイントを聞いた。

古川雅子

Furukawa Masako

国立情報学研究所
情報社会相関研究系 助教
オープンサイエンス基盤研究センター

南山泰之

Minamiyama Yasuyuki

国立情報学研究所
オープンサイエンス基盤研究センター
特任技術専門員

研究データ管理の意義を知り自機関に適した体制を築く

 トレーニングコースで提供される教材の開発は、研究データ管理に関わる人材育成を目的に、機関リポジトリによる研究データの公開・流通をめざす大学図書館等で組織されたJPCOARによって、2015年頃から始まっていた。その内容は、欧米の研究データ管理の事例を参考にしつつも、日本の大学や研究機関の事情に合わせて再構成されている。NIIはJPCOARと協働し、教材をMOOCや学習管理システム「GakuNin LMS」で試験的に提供してきた。開発に携わった南山泰之特任技術専門員は、開発のポイントを次のように語る。「大学における研究データ管理については、データの公開を見越して、情報の組織化、論文公開の経験を培ってきた図書館の主導が期待されます。ただし、図書館の立ち位置は国や機関によって違うため、各々の事情に即した実践的な研究データ管理体制を築かなくてはなりません。日本では、これまで図書館職員が研究データ管理に直接関わることがなかったため、URAや情報基盤センターとの連携が欠かせないのです。この点を意識した教材づくりをしています」
 トレーニングコースは、研究データ管理の必要性を確認することから始まる。その理由を、教材開発からLMSの構築までを担当する古川雅子助教は次のように説明する。「これまで研究者が独自に行ってきた研究データの管理を、大学や研究所が組織として継続的に支援することによりオープンサイエンスを促進し、研究データの分野横断的な活用を促すなど新たな科学的知見を得ることにまでつなげいていくことができます。その基礎として研究データ管理が重要であると理解してもらうためです」
 コース内容をすべて視聴すると、研究データのライフサイクル(生成→加工→分析→保存→公開→再利用)で求められるサポート(サービス)の全体像が把握でき(図)、自機関で研究データ管理を行う際に守るべきポリシーや、協力を仰ぐべき部署、育成すべき人材やそのスキルが明らかになる。これに基づき、それぞれの機関が研究データの管理体制を構築して実践することになる。

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図|研究データ管理サービスの全体像(上)とトレーニングコース「オープンサイエンス時代の研究データ管理」の内容(下)。トレーニングコースURL:https://lms.nii.ac.jp/

よりよいコース提供のため継続的に開発

 トレーニングコースはMOOCを含めると、すでに数千人が受講し、その多くが、「研究データ管理の概要を系統立てて理解できた」と評価している。ただし、機関ごとに必要な教育内容が異なることや、短い時間で効率よく学習したいという意見が聞かれたため、コース内容を数分の単元ごとに切り分けたマイクロコンテンツとして提供することにした。これにより、各機関がコンテンツを自在に組み合わせてカスタマイズできるようになった。その結果、「学習者が学習しやすい環境を提供するだけでなく、教材の改訂がしやすくなった上に、細かな学習履歴データの解析により学習者が難しいと感じている内容を把握しやすくなりました」と古川助教。こうして、最新かつ学習効果の高いトレーニングコースを継続的に提供できる仕組みが整った。
 今後は、研究者向けの教材をトレーニングコースとして提供する予定だ。南山特任技術専門員は、「研究データ管理を、論文発表や助成金をもらうための義務ではなく、研究活動における利便性や発展性に寄与する営みとして定着させたい」と語る。古川助教も「研究データ管理は、研究リテラシーとして学生を含め研究に携わるすべての人が学ぶことが望ましい」と話す。社会の求めに応じた教材開発は続くが、まずは2021年6月から正式公開されるトレーニングコースが、国内機関の研究データ管理をどれだけ後押しできるかに注目したい。

(取材・文=池田亜希子 写真=古末拓也)

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